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zoom RSS 【読書メモ】アリストテレス『詩学』

<<   作成日時 : 2014/11/22 16:40   >>

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アリストテレス『詩学』
テキスト=松本仁助・岡道男訳『アリストテレース 詩学・ホラーティウス 詩論』岩波文庫、1997年

(目次)

第1章 論述の範囲、詩作と再現、再現の媒体について
第2章 再現する対象の差異について
第3章 再現の方法の差異について 劇[ドラーマ]という名称の由来について 悲劇・喜劇の発祥地についてのドーリア人の主張
第4章 詩作の起源とその発展について
第5章 喜劇について 悲劇と叙事詩の相違について
第6章 悲劇の定義と悲劇の構成要素について
第7章 筋の組みたて、その秩序と長さについて
第8章 筋の統一について
第9章 詩と歴史の相違、詩作の普遍的性格、場面偏重の筋、驚きの要素について
第10章 単一な筋と複合的な筋について
第11章 逆転と認知、苦難について
第12章 悲劇作品の部分について
第13章 筋の組みたてにおける目標について
第14章 おそれとあわれみの効果の出し方について
第15章 性格の描写について
第16章 認知の種類について
第17章 悲劇の制作について――矛盾・不自然の回避、普遍的筋書の作成
第18章 ふたたび悲劇の制作について――結び合わせ、解決、悲劇の種類
第19章 思想、語法について
第20章 語法について
第21章 詩的語法にかんする考察
第22章 文体(語法)についての注意
第23章 叙事詩について――その一
第24章 叙事詩について――その二
第25章 詩にたいする批判とその解決
第26章 叙事詩と悲劇の比較

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第1章 論述の範囲、詩作と再現、再現の媒体について
第2章 再現する対象の差異について
第3章 再現の方法の差異について 劇[ドラーマ]という名称の由来について 悲劇・喜劇の発祥地についてのドーリア人の主張


詩作とは再現(ミメーシス)であり、それぞれの詩作=再現の間には、以下の3つの点における差異がある。
 (1) 媒体
 (2) 対象
 (3) 方法
差異(1)詩作における媒体の差異……リズム、歌曲(音曲)、韻律(言葉)の組み合わせ。
差異(2)詩作における対象の差異……詩作によって再現する人物の性質(性格)の差異。わたしたちよりすぐれた人物か、劣った人物か。
差異(3)詩作における方法の差異……作者と登場人物との関係。以下の(a)(b)がある。
(a) 作者が叙述者になって再現する方法。
 (a)‐(i) 作者が別の人間(登場人物)になって再現する場合。〔人物を登場させて会話させたりすること?〕
 (a)‐(ii) 作者自身が作者のまま変わらずに再現する場合。
(b) 作者がすべての登場人物を、行動し現実に活動するものとして再現する方法。

悲劇と喜劇は、行為する(ドラーン)人々を再現するため、ドラーマという名でも呼ばれる。〔上記の差異(3)の(b)〕

第4章 詩作の起源とその発展について

再現としての詩作の起源(なぜ詩作は生まれたか)は、以下の(1)(2)のように、人間の自然な傾向として考えられる。
(1) 再現=模倣すること(ミメーシス)は、子どものころから人間にそなわった自然な傾向である。※1
(2) すべての人間が再現されたものをよろこぶことも、人間にそなわった自然な傾向である。※2

※1 人間と他の動物との違いは、再現を好み再現によってものを学ぶ、という点にある。
※2 実物を見たことのない人が、絵による再現を見たときのよろこびは、再現としてのよろこびではなく、他の原因によるものだろう。

人間の本性から生まれた再現が、即興から詩作へと発展した。
作者の性格によって、詩作の種類は枝分かれした。
・まじめな性格の作者は、立派な人間の行為を再現し、讃歌と頌歌をつくった。
・軽い性格の作者は、劣った人間の行為を再現し、諷刺詩をつくった。
ホメロスは詩作にすぐれていただけでなく、劇的な再現をおこない、悲劇と喜劇のもととなった。
やがて悲劇と喜劇が生まれ、発展してゆく。

第5章 喜劇について 悲劇と叙事詩の相違について

喜劇とは、滑稽だという意味で比較的劣っている人たちを再現するものである。

叙事詩は、高貴なことがらを韻律を伴う言葉によって再現するという点では、悲劇と一致する。
しかし、韻律、長さ、構成要素の点において、叙事詩は悲劇と異なっている。

第6章 悲劇の定義と悲劇の構成要素について

悲劇の定義:
〔1〕 悲劇とは、一定の大きさをそなえ完結した高貴な行為〔再現の対象〕の再現(ミメーシス)である。
〔2〕 それは快い効果をあたえる言葉を使用し、しかも作品の部分部分によってそれぞれの媒体を別々に用いる。〔再現の媒体〕
〔3〕 それは叙述によってではなく、行為する人物たちによっておこなわれる。〔再現の方法?〕※
〔4〕それはおそれとあわれみを通じて、そのような感情の浄化(カタルシス)を達成するものである。〔目的〕

※ ここでの「行為する人物たち」は、俳優を指すと考えてよいと思います。『詩学』においてアリストテレスは、詩作を主題として考えているので、再現をおこなう者としてとりあげられるのはおもに詩人ですが、上演としての悲劇においては当然、俳優も再現をおこなうわけです。

悲劇の構成要素
(1) 再現の媒体……語法、歌曲
(2) 再現の対象……筋、性格、思想※
(3) 再現の方法……視覚的装飾

※ ここでの「性格」とは、登場人物においてその選択にかかわるもの。「思想」とは、登場人物においてその弁論にかかわるもの。

これらの構成要素の重要度に序列をつけるとすると、以下のようになる。
筋>性格>思想>語法>歌曲>視覚的装飾

第7章 筋の組みたて、その秩序と長さについて

悲劇の定義の〔1〕から、筋(=出来事の組みたて)がどのようなものでなければならないかを考えると、以下のことが必要になる。
・初め・中間・終わりという全体の秩序をもたなければならない。
・一定の長さをもち、しかもその長さは、容易に全体を記憶できるものでなければならない。

第8章 筋の統一について

筋は統一されたものでなければならない。〔悲劇の定義〔1〕より?〕
筋の統一とは、それぞれの部分どうしが必然的な結びつきをもって全体をつくっていること。※

※ 「全体」の中の「部分」とは、それを抜いたら全体が支離滅裂になるようなもの。

第9章 詩と歴史の相違、詩作の普遍的性格、場面偏重の筋、驚きの要素について

詩と歴史には、以下のような相違がある。
・詩は普遍的なことを語る。
・歴史は個別的なことを語る。
「普遍的なこと」とは、ありそうな仕方で、あるいは必然的な仕方で起こる可能性のあること。〔蓋然性あるいは必然性をもつこと〕

詩人が「すでに起こったこと」を題材とする(実在した人物たちの名前に固執する)のは、「すでに起こったこと」は「可能なこと」であったはずで、「可能なこと」は「普遍的なこと」だからである。〔※ ここでの固有名と普遍性の関係についての議論は面白いです〕
ただし、出来事や名前がつくりものであったり、観客によく知られていないものであったりしても、悲劇のよろこびは少なくはならない。〔大事なのは普遍性だから〕

このように、詩人は行為〔および出来事〕を再現する者なので、韻律よりも筋が大事である。
そして、すでに起こったことを詩作するのであっても、彼は詩人だと言える。

個々の場面よりも、場面のつながりかたの蓋然性あるいは必然性〔普遍性〕の方が大事である。

詩人が再現すべきなのは、以下のようなこと。
・完結した行為。
・観客の予期に反していながら、因果関係によって起こる、おそれとあわれみを引き起こす出来事。

第10章 単一な筋と複合的な筋について

筋には単一なものと複合的なものがある〔が、複合的なものをつくるべきである〕。
・単一な筋:「逆転」あるいは「認知」なしの「変転」
・複合的な筋:「逆転」あるいは「認知」(あるいはその両方)のある「変転」
「変転」とは、身の上が幸福から不幸へ、あるいは不幸から幸福へと移り変わること。

第11章 逆転と認知、苦難について

筋をつくる「逆転」、「認知」、および「苦難」という要素については、以下のとおり。
・逆転:行為の結果が、意図と正反対になること。
・認知:無知から知へと転換し、人間関係にも変化が生じること。
・苦難:人物が破滅したり、苦痛をうけたりする行為。

第12章 悲劇作品の部分について

悲劇の全体を構成する部分は、以下のようになっている。
(1) プロロゴス(始まりの部分)
(2) エペイソディオン(俳優の対話と所作の部分)
(3) エクソドス(終わりの部分)
(4) コリコン(コロスの部分)

第13章 筋の組みたてにおける目標について

悲劇の筋の組みたては複合的なものであるべきであり、また、観客のおそれとあわれみを引き起こすことが目標である。
・おそれ……不幸になるべきではないのに不幸になる人にたいして起こる。
・あわれみ……わたしたちに似た人が不幸になるときに生じる。
したがって、なんらかのあやまちのゆえに不幸になる者を描くべきである。
悲劇の筋は、どちらかというとすぐれた人があやまちのために幸福から不幸へと転じる、単一の筋がよい。〔ここでの「単一の」は、「複合的な」の対義語ではなく、「二重の」の対義語〕
この基準によって淘汰が起こり、少数の名家をめぐる話がよく題材とされるようになった。
また、このような基準に照らすと、エウリピデスの悲劇は悲劇らしい悲劇である。
二重の筋は本来、悲劇に固有のよろこびにつながるものではなく、喜劇のよろこびにつながるものであり、悲劇としては二流である。

第14章 おそれとあわれみの効果の出し方について

悲劇の効果=目的であるおそれとあわれみは、視覚的装飾からではなく、筋の組みたてから出てくるものであるべき。
悲劇に固有のよろこびは、出来事によって引き起こされるおそれとあわれみから生じるものである。
詩人は、伝統的物語を解体するのではなく、「巧みに取りあつかうすべ」を発見しなければならないのだが、「巧みに取りあつかう」とは、以下の2点について、効果の上がるように筋を設計することである。
・行為する人物が、自分が何をするかということに気づいているか否か。
・その行為が実行されるか否か。
おそれとあわれみの効果をよく引き出す物語は、詩人が技術によってつくり出したものではなく、いくつかの家系をめぐる物語が、偶然この効果を引き出すようなものとして存在していたのである。

第15章 性格の描写について

人物の性格の描写にあたって必要なのは、以下の4点。
・すぐれたものであること。
・ふさわしいものであること。
・わたしたちと似たものであること。
・首尾一貫して再現すること。
性格は、普遍的なもの〔=蓋然的かあるいは必然的なもの〕であらねばならない。

(筋の普遍性について述べると、筋は、筋そのものの因果関係から合理的に解決されねばならない)

人物は、性格上の欠点をもっていながらも立派な人物として再現され、つくりあげられねばならない。

第16章 認知の種類について

認知の種類としては、以下のようなものがある。
(1) 印による認知。
(2) 作者によってつくられた認知。〔登場人物に無理やり説明させているもの〕
(3) 記憶による認知。〔何かを見て気づくこと〕
(4) 推論による認知。〔はっきり分かるのではなく推論すること〕
(5) 観客の予想を裏切る認知。
(6) 出来事そのものから起こる認知。(これがもっともすぐれている

第17章 悲劇の制作について――矛盾・不自然の回避、普遍的筋書の作成

詩人は筋を組みたてて語法によって仕上げるとき、その出来事をはっきり目に浮かべ、さまざまな所作を自分でしてみることで、矛盾や不自然を回避できる。

まずは劇の筋書を普遍的な形でつくり、そのあとでそれを場面として個別的なものにしてゆくのがよい。

第18章 ふたたび悲劇の制作について――結び合わせ、解決、悲劇の種類

劇には、結び合わせの部分と解きほぐし(解決)の部分がある。
・結び合わせ:始まりから変転の直前まで。
・解きほぐし:変転の始まったところから結末まで。

悲劇には、以下の4種類がある。
(1) 複合劇……全体が「逆転」と「認知」からなる。
(2) 苦難劇
(3) 性格劇
(4) 視覚的装飾を主とする劇

悲劇が「同じ」か「異なる」かは筋から判断される。
出来事の結び合わせと解きほぐしがそれぞれ同じであるなら、二つの劇は「同じ」であるといえる。

悲劇は、叙事詩的な構造をもとにつくってはならない。
悲劇に固有の狙いは、驚きである。

コロスは、全体にとって欠かすことのできない部分となるべきである。

第19章 思想、語法について
第20章 語法について
第21章 詩的語法にかんする考察
第22章 文体(語法)についての注意


思想とは、言葉によってなしとげられねばならないすべてのことであり、弁論術にかかわる。
(1) 証明または反証すること。
(2) 感情(あわれみ、おそれ、怒りなど)を引き起こすこと。
(3) ことがらを大きく、あるいは小さくすること。

語法について。
すぐれた文体とは、明瞭であってしかも平板でないものである。

※ 比喩をつくるのは類似を見てとることであり、才能である。

第23章 叙事詩について――その一

叙事詩とは、叙述形式をとり、韻律を用いて再現する詩作である。
叙事詩は悲劇の場合と同様に、劇的な筋として組みたてられねばならない。

叙事詩における出来事の組みたては、歴史の場合と異なったものでなければならない。
歴史においては、出来事の間の関係は偶然による。

第24章 叙事詩について――その二

叙事詩の種類と構成要素は、悲劇とほぼ同じである。
叙事詩と悲劇の違いは、以下の2点。
・長さ……叙事詩は引き伸ばすことができる。
・韻律

詩人のおこなうべき再現とは、みずから語ることではなく、別の人物を登場させて語らせること。

悲劇においても叙事詩においても、不合理なもの(不自然なこと)は驚きを生むが、
・悲劇では不合理を避けるべき。
・叙事詩では不合理も受けいれやすい。
不合理な要素は筋の中に入れてはいけない。
しかし、もっともらしく見えるなら、不合理なことも許される。

文体は目立ちすぎてはいけない。

第25章 詩にたいする批判とその解決

詩にかんして批判を受けたときは、以下の3点について考えてみるとよい。
(1) 再現する対象が(a)事実なのか、(b)人々がそうである思っているものなのか、(c)そうあるべきものなのか。
(2) 再現は語法によって言いあらわされる。
(3) 詩作の技術における正しさは、他のいかなる技術における正しさからも自立している。

詩にかんして、
・「ありえないことが書かれている」と批判されたとき、
・詩の中の人物の言動の倫理性が問題にされたとき、
・詩の中の語の矛盾を指摘されたとき、
それぞれ対処法はある。

第26章 叙事詩と悲劇の比較

再現として、叙事詩と悲劇のどちらがすぐれているか。
悲劇は以下の4点において優位にある。
(1) 要素の多さ。
(2) 読んでもよいし、上演してもよい点。
(3) 短い長さで目的を果たせる凝縮性。
(4) 筋としての統一性。

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