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zoom RSS 安部公房「デンドロカカリヤ」初刊単行本版 内容の整理

<<   作成日時 : 2015/02/06 18:55   >>

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安部公房「デンドロカカリヤ」初刊単行本版
『飢えた皮膚』(書肆ユリイカ、1952年)所収

※ 「『砂の女』と小説の地平――安部公房の小説について――」では、「デンドロカカリヤ」と『砂の女』とを比較して論じています。

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■■登場人物■■

コモン君:事件の主人公。
黒服:黒い詰襟の服を着たずんぐりした男。植物園の園長。コモン君にはアルピイエと呼ばれる。
助手:植物園の助手。園長からは「M君」と呼ばれる。

■■場面の整理■■

●内容で分けた場面●
【行空きで分けた節】 安部公房全集第3巻のページ数と段
▼ 主人公コモン君のまわりの出来事。
▽ 出来事以外の内容。
※ 備考。

●第1場面●

  【1】 350上
▽ コモン君がデンドロカカリヤになった話が始まる。

  【2】 350上
▼ 春先、コモン君は路端の石を蹴る。
▼ 植物病の前駆症状@――なぜ石を蹴ったのか分からなくなる。
※ 日常的な対象意識の自明性が失われたということだろう。
▼ どこかへ引きさらわれてゆく感じをおぼえる。
▼ 植物病の前駆症状A――心の中で植物のようなものが生えてくる。
生理的な墜落感と、心持良い不快感。
▼ 植物病の前駆症状B――地球が鳴り、地球の引力を知覚する。
▼ 足が地面にめり込み、植物になっている。

  【3】 350下
▼ 顔が裏返しになっていることに気づく。
▼ なんとか顔をもとに戻すと、すべてがもとどおりになる。
▼ 何ものかから見られていることを感じるが、なにげないふりをしてごまかそうとする。

●第2場面●

  【4】 351上
▼ コモン君の身には1年間何も起こらなかったが、翌年の春に植物病が再発することになる。
▼ コモン君はKからの手紙を受け取る。
▽ 「あなたが必要です。それがあなたの運命です」
▽ 翌日の3時という時間と、カンランという場所の指定。
▼ コモン君は女文字の手紙から、Kという名の恋人が居たような気になる。

  【5】 351下
▼ 翌朝コモン君はアパートを出る。

●第3場面●

  【6】 352上
▼ 待ち合わせ場所は珈琲舗カンラン。
▼ カンランでKという娘の話を聞いた場面を想像する。
▼ こうなるべきだったんだと思いながらKを待つ。

  【7】 352上
▼ コモン君には物が大きく見える。

  【8】 352下
▼ 2時10分、大男がカンランに入ってくる。

  【9】 353上
▼ 大男だと思ったのは錯覚だったが、少女ではなく、黒い詰襟の服で眼鏡をかけたずんぐりした男だった。
▼ 黒服の男はコモン君の前に掛け、コモン君を見つめる。
▽ コモン君は、黒服の男がKなのではないかと疑う。

  【10】 353下
▼ 妙な論理が植物のように生えてくる。(植物病の前駆症状A)
▼ 緑化週間のポスターを見て、1年前に植物になりかけたことを思い出し、不吉な予感をおぼえる。

  【11】 354上
▼ コモン君は、どんなことがあってもK嬢を黒服の男から守ろうと決意する。
▼ 2時50分、準備をしてK嬢を待つ。
▼ 不安を感じる中、緑化週間のポスターに見入っている。
▼ 植物病の前駆症状C――思わず空を見上げると、眼から天に管が延び、天が眼の中へ流れ込む。
▼ 植物病の前駆症状D――指に太陽を感じる。
▼ 地球が鳴る。(植物病の前駆症状B)
▼ 発作が始まる。
▼ 1年前と同じ植物化。
顔が裏返しになり、全身はほとんど植物に。
▼ 顔を引きはがし、表にむける。

●第4場面●

  【12】 355上
▼ 3時半になっており、黒服の男もK嬢もいない。
▽ Kとはやはり黒服の男だったのではないかと思う。
▼ コモン君は恥じらいと絶望にうちのめされてカンランを出る。
▼ 街を歩くが、自分の自由が不安。

▼ 5時すぎ、道に迷って丘の上の焼跡に出る。
▼ 顔が裏返りそうになるのをなんとか押さえる。
▽ 植物化とは、外界の一切が自分になり、今まで自分だった管のような部分が植物になることだと考える。
▼ コモン君は植物化を受け入れそうになる。

  【13】 356下
▼ 「デンドロカカリヤだ!」という声とともに、黒い詰襟のずんぐりした男が現われ、植物になったコモン君を海軍ナイフで採集しようとする。
▼ 偶然から、コモン君は人間に戻る。

  【14】 357下
▼ コモン君は落ちていた男のナイフを拾い、走って帰る。
▼ 黒服の男はコモン君を尾行してきている。

●第5場面●

  【15】 358上
▼ コモン君はアパートに帰る。
▼ 翌朝、黒服のずんぐりした男が、コモン君を見張っている。
▼ コモン君は外に出る。

●第6場面●

  【16】 358下
▼ コモン君は何かをつきとめようという衝動に駆られて電車に乗る。

  【17】 358下
▼ コモン君は図書館前で電車をおりる。
▽ 人間が植物になるということについて調べようと思う。
▽ ダンテの『神曲』の中の、人間が植物になる地獄から調べ始めようと思う。
▼ 受付の係員は黒服の男で、すぐに『神曲』が用意され、読むべき頁も指定される。
▽ 植物になるのは自殺者への罰。
地獄に堕ちた人間は罪の意識を持たない。
罰だけがあって罪がない。
コモン君は、自分が知らぬうちに既に自殺してしまっていたのかもしれないと考える。
▼ 図書館の廊下。
顔を伏せて歩く、光をおそれる人々。
時間が停ったような静寂があり、あたりの人々が植物になるような感覚をおぼえる。
▼ コモン君は受付の黒服の男につかまえられる。
黒服の姿は、『神曲』の挿絵にあった、自殺者の樹をさいなむ怪鳥アルピイエに見える。
▼ コモン君は図書館から逃げ出す。

●第7場面●

  【18】 360上
▼ アパートの部屋に帰り、Kからの手紙を燃やす。
▼ 手紙を燃やす火が、人間がゼウス一族と戦うためのプロメテウスの火に見える。
▼ ギリシア神話の本を入手し、ゼウス一族によって植物にされた人々の話を確認する。
▽ 植物への変形とは、ゼウスの奴隷たちの法律である。
・不幸と同時に幸福を奪われる。
・罪から解放されたかわりに罰そのものの中に投げ込まれる。
▽ プロメテウスの火がほしい。

●第8場面●

  【19】 361上
▼ コモン君は手紙を受け取る。
▼ K植物園長(黒服=アルピイエ)からの手紙。
▽ コモン君はデンドロカカリヤ・クレピディフォリヤと呼ばれる。
▽ デンドロカカリヤが母島列島以北に存在するのは驚くべきことであるという。
▽ 夜の6時に訪問すると予告。
▼ アルピイエ(K植物園長=黒服)が、夜の6時にやってくる。
▽ コモン君にはアルピイエが、ゼウスの使いのように思われ、火を消しに来たのだと考える。
▼ コモン君とアルピイエの会話。
▽ アルピイエはティミリヤーゼフの「植物の生活」を読むようにコモン君にすすめる。
植物と動物との差異は質的なものではなく量的なものである。
▽ アルピイエは、植物とは現代のホープであり、現代の神々であると考える。
植物は精神分裂とアナロジーであり、ヒステリーが植物の信者となる。
▼  アルピイエの提案。
・植物園の温室を提供する。
・そこは母島と同じ気候の極楽である。
・政府の保証つきである。
・そこには他にも、植物になった沢山の人々がいる。
▽ 幸福や不幸など役に立たないものであり、それよりも、ますます純粋に、豊富に存続しつづけるということが問題だ、とアルピイエは言う。
▽ 植物化に関するコモン君の見解。
・植物化とは、ゼウスの奴隷たちへのお情けである。
・植物化とは、アルピイエによって火を消され、不毛の罰に追い込まれることである。
▽ 植物に関するアルピイエの見解。
・植物こそロゴスの根本である。
・植物は新しい神話の神々であり、純粋そのものである。
▼ アルピイエは出て行く。
▼ コモン君は3日も慄えつづけ、何をするべきか考えつづける。
▽ 植物病とは、ほとんどすべての人に隠されているものが、少数の人の場合にあらわになること。

●第9場面●

  【20】 363下
▼ コモン君は、アルピイエ(園長)を殺すために植物園へ行く。
▼ 緑化週間の花形の植樹デーの準備をしているアルピイエが、コモン君を迎える。
▼ 温室の植物たちが、コモン君を悲しみにつき入れる。
▼ コモン君はアルピイエを殺そうとするが、ナイフを取り上げられる。
▽ 連帯しなければアルピイエは亡ぼせない、と語り手が述べる。
▼ コモン君は植木鉢に乗せられる。
▼ コモン君は植物になる。
▼ 助手は植物になったコモン君を見て、「大したやつじゃなかったな」と思う。
▼ 園長(アルピイエ)は笑い、デンドロカカリヤの学名をラテン語でカードに書き、コモン君の幹に大きな鋲でとめる。

※ 関連項目

「安部公房「デンドロカカリヤ」における「顔」と「植物病」」→ http://42286268.at.webry.info/201502/article_6.html
「安部公房「デンドロカカリヤ」の改稿について」→ http://42286268.at.webry.info/201502/article_10.html
「『砂の女』と小説の地平――安部公房の小説について――」→ http://42286268.at.webry.info/201502/article_15.html

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