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zoom RSS 安部公房「デンドロカカリヤ」初出版と初刊単行本版の異同

<<   作成日時 : 2015/02/07 00:47   >>

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安部公房「デンドロカカリヤ」
初出版と初刊単行本版の異同

※ この作業をもとにした考察は → 「安部公房「デンドロカカリヤ」の改稿について」

▽ 初出版
雑誌「表現」1949年8月号
【行空きによる節】
安部公房全集第2巻をテキストとしてページ数と段を記載。
詳しい内容の整理は → http://42286268.at.webry.info/201502/article_7.html

▼ 初刊単行本版
『飢えた皮膚』書肆ユリイカ、1952年
【行空きによる節】
安部公房全集第3巻をテキストとしてページ数と段を記載。
詳しい内容の整理は → http://42286268.at.webry.info/201502/article_8.html

画像


■■登場人物■■

▽ 「ぼく」:語り手。
▼ 語り手として存在するが、単数の一人称を用いず、物語内の事件にも関与しない。

▽ 「君」:語り手の語りかける相手。
▼ 存在が抹消される。

▽ コモン君:事件の主人公。「ぼく」の友達。
▼ 主人公ではあり続けるが、「ぼく」との関係は抹消される。

▽ K嬢:コモン君に手紙を送った女性。
▼ おそらく黒服(K植物園長=アルピイエ)に統合されている。

▽ 大男:K嬢の交際相手。
▼ 存在が抹消され、黒服(K植物園長=アルピイエ)に統合されている。

▽ 黒服:植物園の園長Hであり、コモン君からはアルピイエと呼ばれる。
▼ 名前がKに変わる。K嬢、大男、図書館の受付の男の役割を統合し、あらゆる場面でコモン君に迫ってくる。

▽ 受付の男:コモン君のアパートの近くにある図書館の受付の男。
▼ 存在が抹消され、黒服(植物園長=アルピイエ)に統合されている。

▽ 助手:「M君」と呼ばれる、植物園の助手。
▼ 初出版と同じ。

■■場面■■

▽【1】 234上
植物病の前駆症状について @。

カットされている。

▽【2】 234上
植物病の前駆症状について A。

カットされており、「君」が登場しなくなっている。

▽【3】 234上
植物病の前駆症状について B。

カットされている。

▽【4】 234下
植物病に対抗するため力を合わせようという呼びかけ。

カットされている。

▽【5】 234下
植物病の説明。

カットされている。
「原存在」と「意識」と「顔」の関係についての難解な記述が消え、「顔」が「裏返し」になることについて説明されなくなっている。
「被害者」と「加害者」という考え方も出てこなくなっている。
語り手も、自分を一人称で示さなくなっている。

▽【6】 235上
植物になったコモン君の話を始めるにあたっての前置き。

カットされている。

▽【7】 235下
コモン君がデンドロカカリヤになった話が始まる。
▼【1】 350上
初出版と同じ。

▽【8】 235下
コモン君は名前のとおり普遍的な存在である。

カットされている。

▽【9】 236上
コモン君の1回目の植物化。(路にて)
▼【1】 350上
「意識の断層」をめぐる難解な箇所がカットされている。

▽【10】 237上
語り手の立場の確認。

カットされている。

▽【11】 237上
コモン君の話の再開。

カットされている。

▽【12】 237上
1年後、コモン君の植物病が再発する話が始まる。
▼【4】 351上
初出版とほぼ同じ。

▽【13】 237下
コモン君がK嬢からの手紙を受け取る。
▼【4】
初出版とほぼ同じ。(手紙をはさんで記述の順序は異なる)

▽【14】 237下
K嬢からの手紙。
▼【4】
手紙の文言が非常に簡潔かつ抽象的になり、必然性がより強調されている。

▽【15】 238上
手紙を読んだコモン君の反応。
▼【4】
コモン君はKという人物を知らないことになっており、Kの存在自体が疑わしく思われるような書き方がされている。

▽【16】 238下
コモン君と語り手との関係。

カットされており、コモン君と語り手との関係の記述が抹消されている。

▽【17】 238下
コモン君がアパートを出る。
▼【5】 351下
語り手の場面への関与が抹消されている。

▽【18】 238下
コモン君は珈琲舗カンランでK嬢のことを考える。
▼【6】 352上
K嬢との記憶が、捏造された思い込みというふうにされている。

▽【19】 239下
K嬢を待つコモン君。
▼【7】 352上
初出版とほぼ同じ。

▽【20】 239下
大男が現われる。
▼【8】 352下 〜【10】 353下
大男という印象がすぐに否定され、黒服のずんぐりした男に。
大男の存在が抹消され、黒服(植物園長=アルピイエ)に統合される。

▽【21】 241上
コモン君の2回目の植物化。(カンランにて)
▼【11】 354上
「意識の断層」にふれる箇所がカットされている。

▽【22】 242上
カンランを出て街を歩く。
▼【12】 355上
初出版とほぼ同じ。

▽【23】 242下
コモン君の3回目の植物化。(焼跡にて)
▼【12】
やや難解な「原・顔」の話が抹消されている。(「原存在」についての記述をなくしたためか)

▽【24】 243下
黒服の男(植物園長=アルピイエ)が初めて登場し、植物になったコモン君をナイフで採集しようとする。
▼【13】 356下 〜【14】 357下
黒服(植物園長=アルピイエ)は2回目の登場ということになる。

▽【25】 245上
コモン君はアパートに戻り、語り手と会話する。
▼【15】 358上 〜【16】 358下
語り手の場面への関与が抹消されており、それにともなって大きく変更されている。
コモン君を救えたかもしれないという語り手の考えが抹消され、他の可能性の想像(偶然性の感覚)と語り手の後悔が出てこなくなっている。

▽【26】 247下
図書館で『神曲』を調べ、黒服をアルピイエだと思う。
▼【17】 358下
図書館で黒服(植物園長=アルピイエ)が待ち受けており、『神曲』を然るべき箇所を調べるように黒服から誘導されるようになっている。
受付の男の存在が抹消され、黒服(植物園長=アルピイエ)に統合される。

▽【27】 248下
K嬢のことをあきらめ、手紙を燃やし、プロメテウスの火がほしいと思う。
▼【18】 360上
K嬢と大男の存在が抹消されている。

▽【28】 249下
植物園長(黒服=アルピイエ)からの手紙を受け取る。
▼【19】 361上
初出版とほぼ同じ。

▽【29】 249下
H植物園長(黒服=アルピイエ)からの手紙。
▼【19】
手紙の差出人の名が「K植物園長」に変更され、文面が簡潔で無礼なものになっている。

▽【30】 250上
アルピイエ(植物園長=黒服)の訪問と会話。
▼【19】
「原・存在」など、やや難解な箇所が抹消されている。

▽【31】 252上
コモン君の4回目の植物化。(植物園にて)
▼【20】363下
初出版とほぼ同じ。

※ 関連項目

「安部公房「デンドロカカリヤ」における「顔」と「植物病」」→ http://42286268.at.webry.info/201502/article_6.html
「安部公房「デンドロカカリヤ」の改稿について」→ http://42286268.at.webry.info/201502/article_10.html

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