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zoom RSS モルガン『古代社会』第三篇 第一章「古代家族」(概説)

<<   作成日時 : 2015/05/26 01:56   >>

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ルイス・ヘンリー・モルガン『古代社会』(1877年)
第三篇 家族観念の発達
(テキスト=青山道夫訳、岩波文庫、1972年)

第一章 古代家族(概説)
第二章 血縁家族
第三章 プナルア家族
第四章 対偶婚家族および家父長制家族
第五章 一夫一婦制家族
第六章 家族と関係を有する諸制度の順列

まとめ

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第一章 古代家族

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  1-1 家族の継次的5形態  (p154-p156)

モルガンが『古代社会』を執筆した当時の、「家族」なるものに関する一般的な通念は、以下のようなものであった。
・現在の文明国で支配的な一夫一婦制家族は、人類史上つねに存在していた。
・例外的地域においてのみ、家父長制家族が一夫一婦制家族を中断した。

これに対してモルガンは、次のようなことを主張する。
・家族の観念は、いくつかの家族形態を経て、段階的に発展した。
・一夫一婦制家族は、その発展の最後に生じた。

モルガンが考える家族形態を、歴史的に早い順に並べると、以下のようになる。
(T) 血縁家族:血縁婚を基礎とする。
(U) プナルア家族:プナルア婚を基礎とする。
(V) 対偶婚家族:対偶婚を基礎とする。
(W) 家父長制家族:一夫多妻制を基礎とする。
(V) 一夫一婦制家族:一夫一婦制を基礎とする。
――これらのうち、(T)(U)(X)は基本的かつ普遍的な家族形態であり、それぞれ新しい「血族組織」を創設するほど有力だった。
――(V)は中間的で、(W)は特殊であり、これらは新しい血族組織を生み出さなかった。

  1-2 血族組織と家族形態  (p156-p160)

以下、家族と結婚の各形態の発生を説明するために、「血族および姻族の組織」(p156)すなわち血族組織の実体を示してゆく。

(1) マレイ式血族組織 (← 血縁家族)

モルガンが『古代社会』を執筆していた当時までに発見された中で、もっとも原始的な血族組織が「マレイ式血族組織」である。
これはポリネシア人の間に見出されたものであり、典型としてハワイ人の血族組織がとりあげられる。
その血族組織においては、すべての血族は親等の遠近を問わず、自己(Ego)を中心とした世代別の5つの範疇に組み込まれ、そこに姻族関係が付加される。5つの範疇は次のとおり。
・祖父母
・両親
・兄弟姉妹
・子ども
・孫

マレイ式血族組織は、血族婚による血縁家族とともに生じた。
血族婚とは、一集団内における直系および傍系の兄弟姉妹の通婚のことである。

マレイ式血族組織は、血族婚による血縁家族(「血族婚家族」とも呼ばれる)が古代に存在した証拠である。
(例1) ポリネシア人の間では、「発見」の時点ですでに血族婚による血縁家族は失われており、プナルア婚の段階に入っていたが、血族組織の変更を強いる動機も制度変革もなかったため、マレイ式血族組織が残存していた。
(例2) 特にハワイ(当時「サンドウィッチ諸島」とも呼ばれていた)では、『古代社会』執筆の約50年前(1820年代)にアメリカの伝道団が設けられた時点においては、血族婚が行われていた。

(2) テューラニア・ガノワニア式血族組織 (← プナルア家族)

時代の推移とともに、プナルア婚氏族組織が生じて、それらのために親族関係が変更されると、マレイ式血族組織が「テューラニア・ガノワニア式血族組織」へと変化し、地球上の大部分に拡大した。
・北アメリカ
・南アメリカ
・北アフリカにも痕跡(しかしここではマレイ式に近い)
・インド
・オーストラリアの一部
ちなみに、テューラニアは中央アジアを(トラニアなどとも)、ガノワニアはアメリカ先住民族の土地のことを指す。

プナルア婚とは、一集団内における、直系および傍系の数人の姉妹たちとその夫たち、または直系および傍系の数人の兄弟たちとその妻たちとの集団婚のことである。
このプナルア婚と、それにもとづくプナルア家族の形成だけでは、血族組織をマレイ式からテューラニア式に改変するに足る十分な動機を生まなかった。
血族組織の改変は、氏族組織のような大きな制度とセットになって初めてもたらされるのである。
実際、氏族組織は実の兄弟姉妹を結婚関係から排除し、血族婚を抑制したのであって、そのことで血縁家族にもとづくマレイ式血族組織は存立しえなくなり、テューラニア式血族組織への変更が引き起こされた。

テューラニア式血族組織は、後のアリアン式の親族関係のすべてを含み、さらに、アリアン式では親族関係に入らないものをも親族関係に入れる広さをもつ。
この血族組織のメンバーは、親族のすべてに対して、親族関係の用語(親族呼称)で呼びかけることにより、親等の遠い親族との間にも親族関係を維持した。

(−) 対偶婚家族(と家父長制家族)は新しい血族組織を作らなかった

アメリカ原住民が「発見」されたとき、彼らの状態は以下のようなものであった。
・血族組織は、テューラニア式のまま。
・結婚形態は、プナルア婚を経て、対偶婚の状態に入っていた。
・家族形態は、対偶婚家族
対偶婚とは、排他的同棲をともなわない、一対の男女の結婚のことである。

このアメリカ原住民の例では、テューラニア式血族組織において把握される親族関係(親族構造の論理)と、対偶婚家族から派生する親族組織(親族構造の実態)との間にずれがあったわけである。
というのも、家族の形態は、必然的に、血族組織よりも急速に発展する。そして血族組織は、あとから家族関係を記録してゆくのである。
この場合、対偶婚家族の発達だけでは、血族組織をテューラニア式から次の形態(アリアン式)へと改変するに足る大きな動機にはならなかった。(一夫一婦制家族と財産制度があらわれて初めて、血族組織の改変につながる)

(3) アリアン・セム・ウラル式血族組織 (← 一夫一婦制家族)

アリアン・セム・ウラル式血族組織」とは、一夫一婦制家族における親族関係を定める組織である。
一夫一婦制とは、一対の男女が、排他的同棲をともなって結婚する制度のことである。

アリアン・セム・ウラル式血族組織は、後に文明時代に達する主要な諸民族の間で、テューラニア式血族組織に基礎を置きながら形成され、テューラニアに取って代わった。

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ここまでのことをいったんまとめる。

モルガンが『古代社会』を執筆していた当時、(U)プナルア家族、(V)対偶婚家族、(W)家父長制家族、(X)一夫一婦制家族の4種類の家族形態が、世界には存在していた。

一方モルガンは、血族組織のタイプを、(1)マレイ式、(2)テューラニア・ガノワニア式、(3)アリアン・セム・ウラル式の3種類に分類した。
そして(1)マレイ式血族組織から類推して、古代に(T)血縁家族が存在したと考え、次の3種類の家族形態を、基本的な家族形態だとした。
(1)マレイ式血族組織と結びついた (T)血縁家族、
(2)テューラニア・ガノワニア式血族組織と結びついた (U)プナルア家族、
(3)アリアン・セム・ウラル式血族組織と結びついた (X)一夫一婦制家族

モルガンによれば、(T)(U)(X)という3つの家族形態は、それぞれ異なった生活状態と、(1)(2)(3)という3つの血族組織とを示している。
そしてこのことから、以下のことが分かる。
・血族組織は、永続的なものである。
・(したがって)血族組織は、古代社会の状態に関する証拠となる。

  1-3 一夫一婦制の確立  (p160-p162)

ここで、家族の最終形態である一夫一婦制家族が確立するまでの過程をみてみよう。

一対の男女間の結婚(対偶婚)は、未開時代の前期から存在していた。(対偶婚は氏族制度を起源とする)
これは一夫一婦制家族の萌芽を含んではいるが、以下の点で一夫一婦制とは区別されねばならない。
・一夫一婦制の要件である排他的同居を欠いていた。
・夫婦の関係は平等とは程遠かった。
   ↓
(財産の観念の発達により、一夫一婦制の成立の条件が整えられてゆく)
   ↓
ギリシア部族が歴史に登場した頃、一夫一婦制家族は存在していたが、完全に確立されてはおらず、ホメロス時代のギリシア人(未開の後期)の間でも、夫人の地位は低かった。
   ↓
(財産の相続に関しての法律が整備される)
(子どもの父親が誰かということが明白になってゆく)
   ↓ 著しい改善
ペリクレス時代(前5世紀、文明時代)に至り、一夫一婦制が制度として定着した。ローマでも一夫一婦制が広まった。ただしギリシアでもローマでも、婦人は夫に対して娘という関係にあるものとされていた。
   ↓ 漸進的・継続的進歩
近代家族において、男女は平等に近づいているが、両性の平等と結婚関係の平等が完全に認められるまで、いっそうの進歩が運命づけられている。

一夫一婦制家族は、以下の2つの条件が満たされたときに可能になる。
・財産の観念の発達と、それに関わる立法。
・氏族組織の縮小と消滅。

  1-4 アリアン・セム・ウラル式血族組織の確立  (p163-170)

次に、血族組織の最終形態であるアリアン・セム・ウラル式が確立するまでの過程をみてみよう。

マレイ式組織(かつ血縁家族)の男子は、
・兄弟の息子を、自分の息子と呼ぶ。(兄弟の妻は自分の妻でもあるから)
・姉妹の息子を、自分の息子と呼ぶ。(姉妹は自分の妻でもあるから)

テューラニア式組織(かつプナルア家族)の男子は、
・兄弟の息子を、自分の息子と呼ぶ。(兄弟の妻は自分の妻でもあるから)
・姉妹の息子を、自分の甥と呼ぶ。(氏族組織の下で、姉妹は自分の妻ではなくなったから)

イロクォイ人(テューラニア・ガノワニア式組織かつ対偶婚家族)の男子は、
・兄弟の息子を、自分の息子と呼ぶ。(兄弟の妻が自分の妻ではなくなったのに)
・その他にも、家族制度の実態と一致しない親族関係の用語が多数用いられる。
ここではテューラニア・ガノワニア式血族組織が家族の実態と合わなくなっているが、血族組織は変更されなかった。

さて、これらに対して、アーリア民族はどうであったか。
アーリア民族は、次のようなメリットのために、一夫一婦制に移行した。
・子どもの父性(子どもの父親は誰かということ)が明確になる。
・相続人の適法性(財産を継ぐ権利を法律上もつのは誰かということ)が確保される。
そのとき、一夫一婦制と適合しないため、テューラニア式血族組織は廃止された。
そして採用された新しい血族組織は、テューラニア部族が一定の親族関係を明白にしようとする際に用いていた記述式方法にもとづく、記述式組織としてのアリアン・セム・ウラル式であった。

以上のことを証明するには、3つの血族組織と3つの基本的家族形態を検討する必要がある。

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・母と子、兄弟と姉妹、祖母と孫の親族関係は、いかなる時代においても確実に確かめられた。
・父と子、祖父と孫の親族関係は、一夫一婦制によって保証されるまでは確かめられなかった。
このことからも分かるように、親族関係の用語法は、結婚の形態に依存する。
そして血族組織は、それらの用語が継続的に用いられた結果として生ずる。
血族組織は結婚ならびに家族の形態に依存しているので、血族組織を調べることで、結婚と家族について知ることができる。
結婚形態が発達するにつれて、社会的な影響力の強い制度の出現によって特徴づけられながら、血族組織も自然的に発達した、と考えられる。

血族組織は2つの窮極的形態に分類される。
級別式血族組織:血族を、自己との親等の遠近に関わりのない範疇(おもに世代)に分類し、その範疇内のすべての人々に同一の親族名称を適用する。各人を特定的に記述しない。マレイ式、テューラニア・ガノワニア式。
記述式血族組織:基本的な親族名称とその組み合わせにより、各人を特定する。アリアン・セム・ウラル式。
この両者の境界は、未開民族と文明民族との間の境界とほぼ重なる。

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親族関係には血族と姻族があり、血族には直系と傍系があり、傍系はその中に区分(父方/母方)と支系(男系/女系)を含むので、そのすべてを記述するのは困難である。
したがって、よほどのことがない限り、人々は級別式で満足する。

財産の相続を規定するという必要がなければ、記述式の親族名称の体系(記述式血族組織)は構成されなかった。
血族を特定的に記述することは、人類の言語の中でも少数の言語でしかなしとげられなかった。
その記述の方法が完全に達成されたのは、ローマの法学者によってであり、それを主要なヨーロッパ民族が採用した。(テューラニア式組織の破棄、アリアン式組織の採用)

  1-5 血族組織の永続性  (p170-171)

血族組織は、状況の大変化をもたらした社会の有機的活動から生じる。
それはいったん成立した後は、制定された法によってではなく慣習によって維持され、
変化するにしても、人為的な創造としてではなく緩慢な発達として変化する。
人は誰でも、親族集団の中心(自己=Ego)として生まれ、既存の一般的な血族組織を理解して使用せざるをえない。
そのため、意識的に血族組織の全体あるいは一部を変更するのは困難である。
血族組織は長く続く傾向があり、もし変更が起こるとしたら、その変更の動機は、慣行と同程度には普遍的な出来事であらねばならない。
この永続性のため、血族組織は、現代から古代社会のあり方を考えるときの証拠となる。

  1-6 テューラニア式血族組織の広範囲への分布  (p171-p172)

テューラニア式血族組織は複雑なので、異なった民族や種族の間で細かい差異は見出されるが、基本的特徴はだいたい同じである。

一夫多妻制にもとづく家父長制家族は、普及範囲が限られていたので、人類の諸事象にほとんど影響を及ぼさなかった。

  1-7 家屋内での生活  (p172-p173)

野蛮人および未開人の家屋内の生活(家族での家庭生活)については、今後さらなる研究が必要である。

ヴェネズエラの沿岸部族が、野蛮人のサンプルになる。
・おそらくプナルア家族で、夫たちの集団と妻たちの集団が、160人を収容する同一の家屋に住む。
・野蛮時代にはこのような家屋(通常は共同長屋)内の生活様式が一般的だっただろうと推定される。

北アメリカの先住民族の部族が、未開人のサンプルになる。
・対偶婚家族だが、共同棟割長屋に居住し、世帯内では共産主義。

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第一章 古代家族(概説)
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