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zoom RSS モルガン『古代社会』第三篇 第三章「プナルア家族」

<<   作成日時 : 2015/06/04 00:32   >>

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ルイス・ヘンリー・モルガン『古代社会』(1877年)
第三篇 家族観念の発達
(テキスト=青山道夫訳、岩波文庫、1972年)

第一章 古代家族(概説)
第二章 血縁家族
第三章 プナルア家族
第四章 対偶婚家族および家父長制家族
第五章 一夫一婦制家族
第六章 家族と関係を有する諸制度の順列

まとめ

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第三章 プナルア家族

  3-1.血族家族からプナルア家族への移行 (p211-p213)

プナルア家族とは、同性のきょうだいどうしで互いの配偶者たちを共有する集団婚(プナルア婚)によって形成される家族。
野蛮状態の部族において広く行われ、場合によっては、未開の下層(前期)や中層(中期)に達した部族の間でも存続した。
有史時代に入ってもヨーロッパ、アジア、アフリカにあっただけでなく、ポリネシアでは19世紀に入っても存在していた。
プナルア家族は血縁家族から推移して生まれたものである。

〇血縁家族
  ↓
・実の兄弟姉妹を結婚関係から排除。
・傍系の兄弟姉妹(種々のいとこ)は結婚関係の中にとどめる。
  ↓
〇プナルア家族

この推移は容易になし遂げられるものではなく、それぞれの部族で個別に起こった実験的な変化の事例が、部分的に承認されて徐々に一般的になり、最終的に普遍性を獲得したのだと思われる。(「自然淘汰の原則の作用のすぐれた例証」p212)
オーストラリア部族の階層組織も、実の兄弟姉妹を結婚関係から排除しつつ傍系の兄弟姉妹(種々のいとこ)は結婚関係の中にとどめるという意義をもっており、この階層組織が生んだプナルア集団は、氏族組織の萌芽のようなものを含んでいる。

  3-2.テューラニア式血族組織の起源 (p213-p214)

人類の最も重要で、かつ広く普及した制度は、以下の3つである。
・プナルア家族
・氏族制度
・テューラニア式血族組織
プナルア婚の形態はプナルア家族を生んだが、プナルア家族の発生だけでは、マレイ式血族組織からテューラニア式血族組織への変革はなし遂げられなかった。
(たとえばハワイ人は、プナルア家族を有したが、氏族組織もテューラニア式血族組織ももたなかった)
マレイ式血族組織がテューラニア式血族組織へと移行するためには、プナルア家族に加えて氏族組織が形成され、この氏族組織が実の兄弟姉妹を結婚関係から排除することが必要であった。
何らかのプナルア集団(プナルア婚を行う集団)が存在なければ氏族組織は発生せず、氏族組織がなければテューラニア式血族組織は形成されなかった。
  ↓
以下、(T)プナルア家族(3-3)、(U)氏族組織(3-4)、(V)テューラニア式血族組織(3-5)という3つの制度について、別個に考察してゆく。

  3-3.(T)プナルア家族 (p214-p220)

(1) プナルア家族の仕組み (p214-p216)

ハワイ人の間に見出されたプナルアの慣習については、アンドリューズ判事(書簡)、アルテマス・ビショップ師(書簡)、ビンガム氏(著書)が報告している。
彼らが「発見」した結婚形態は、夫と妻が集団内で共同に通婚するプナルア集団を作り出しており、それぞれの集団は、生まれた子どもたちを包含するプナルア家族であった。
このプナルア家族には、以下の2つのタイプがあった。
i) 女性たちの姉妹関係が基礎になる場合、その夫たちが相互に「プナルア関係」に。
ii) 男性たちの兄弟関係が基礎になる場合、その妻たちが相互に「プナルア関係」に。

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(2) プナルア家族の起源 (p216)

プナルア家族は血縁家族から生じた。
i) 女性たちの姉妹関係が基礎になった場合
姉妹は実の兄弟と結婚しなくなり、長い期間を経た後、傍系の兄弟(種々の従兄弟)とも結婚しなくなった。
直系・傍系の兄弟以外から夫を選ぶようになった女性たちは、直系・傍系の姉妹どうしで夫たちを共有した。
ii) 男性たちの兄弟関係が基礎になった場合
兄弟は実の姉妹と結婚しなくなり、長い期間を経た後、傍系の姉妹(種々の従姉妹)とも結婚しなくなった。
直系・傍系の姉妹以外から妻を選ぶようになった男性たちは、直系・傍系の兄弟どうしで妻たちを共有した。

血縁家族からプナルア家族への社会の発展は、氏族組織の形成につながる大きな向上の発端であった。(氏族組織はその後、対偶婚家族を経て一夫一婦制を生み出すことになる)

(3) プナルア慣習がテューラニア・ガノワニア式血族組織を形成した (p216-p217)

テューラニア・ガノワニア式血族組織の親族関係は、プナルア集団における結婚を考慮に入れなければ説明できない。
したがって、プナルア婚とプナルア家族が先に普及していなければ、テューラニア・ガノワニア式血族組織は存在しえなかったといえる。

プナルア集団を形成する中で始まった社会の大きな向上は、テューラニア式血族組織とともに氏族を組織することで完成され、後に一夫一婦制に至ることになる。
ゆえに、文明状態に入ってもなお氏族組織を有したすべての民族(ギリシア人、ローマ人、ゲルマン人、ケルト人、ヘブライ人)は、それ以前にはプナルア慣習をもっていたのだと考えられる。

(4) プナルア慣習の例 (p217-p220)

(プナルア家族は基本的には野蛮時代の中期から後期にかけてのものだが)
プナルア慣習の痕跡は、例外的な場合には、ヨーロッパ、アジア、アメリカの諸部族の間で、未開時代の中期に至るまで残存した。
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・古代ブリトン人(未開の中期)については、カエサルの『ガリア戦記』の記述から、プナルア慣習があったことが分かる。
・マッサゲタイ人(未開の中期)についてヘロドトス(前485頃-前420頃)は、男子の各々は一人の妻を有していたがすべての妻は共有であったと書いており、この記述からは、プナルア家族から対偶婚家族への移行を読み取ることが可能である。
・アガテュルソイ人(未開の中期)についてはヘロドトスは、男たちが嫉妬なしに妻を共有したと述べているが、これもプナルア婚を観察したものとして理解すべきである。
・南アメリカの原住民のうち最も進歩していない若干の部族(未開の前期)も、嫉妬することなくプナルア婚を行っていたらしい。(海洋探検家エレラの著書による)
・北アメリカの諸部族は、モルガンの知る限りみな対偶婚家族の形態に移っていたが、プナルア婚の痕跡は残っていた。

  3-4.(U)氏族組織 (p220-p222)

(1) 氏族組織の発生 (p220-p222)

氏族組織は、ハワイのプナルア集団オーストラリアの階層組織のようなプナルア家族を起源として野蛮時代に生じ、長い時間をかけて発達した後、未開時代の前期に完全な状態になる。
太古における氏族の基本的規則は次の二点である。
・兄弟姉妹の通婚の禁止。
・女系の出自。
特に後者の点についていうと、子どもの父親が誰であるのかは正確には確認できないため、氏族への所属は母親と子どもの結びつきをとおしてしかたどられない。
ゆえにプナルア家族は、実質的には氏族の成員と一致する人々から成るとはいえ、無条件に氏族組織を形成することができるわけではない。
ある種の知的操作によって、プナルア家族の中でも直系および傍系の姉妹どうしで夫たちを共有するタイプのものに注目しなければ、女子をとおして出自を確定しつつ氏族を組織することはできないのである。

(2) 氏族組織が古代社会に及ぼした影響 (p222)

野蛮時代にプナルア家族から生まれた氏族組織は、その発達と普及にともなってプナルア集団を縮小し、以前は多数であった妻たちの数を減少させた。
未開時代の前期、消滅し始めたプナルア家族の中からだんだんと対偶婚家族が現われてきて、妻は購買や略奪によって(も)獲得されるようになった。
氏族組織は、プナルア集団から発生したものではあったが、自らの母胎であるプナルア家族を消滅させる原因ともなり、社会を対偶婚の段階へと進展させたのであった。

  3-5.(V)テューラニア・ガノワニア式血族組織 (p222-p236)

(1) テューラニア・ガノワニア式血族組織の概要 (p223)

一般に、家族形態と血族組織の間には、直接的な関係がある。
・家族形態の変化は能動的であり、社会が進歩するにつれて家族形態も進歩する。
・血族組織の変化は受動的であり、家族によってなされた進歩を長い時間をかけて記録し、家族が根本的に変化した場合にのみ血族組織も変化する。

テューラニア式血族組織は、プナルア婚とプナルア家族によって構成される親族関係を表現するために生まれたものであり、プナルア家族が存在した証拠である。
この血族組織は、自らの起源であるプナルア婚の慣習が消滅し、プナルア家族が対偶婚家族に変わった後も、ユーラシア大陸(東半球)とアメリカ大陸(西半球)に残り、モルガンが『古代社会』を執筆した当時(19世紀後半)まで伝わってきた。

(2) テューラニア・ガノワニア式血族組織の仕組み (p224-p231)

・セネカ−イロクォイ族の血族組織は、アメリカのガノワニア諸部族の典型。
・南インドのタミール族の血族組織は、アジアのテューラニア諸部族の典型。
両者において、基本的な特徴は同一である。

親族関係の用語は、自分とその氏族のあらゆる成員との関係をたどりうる手段である。
・タミール族のあいさつにおいては、
i) 呼びかけられた者が年下ならば、年長者に対して親族関係の用語で返事をしなければならないが、
ii) 呼びかけられた者が年上ならば、年少者に対しては、親族名で返事をしても個人名で返事をしてもよい。
・アメリカ原住民のあいさつにおいては、年齢の上下に関わらず、あいさつには親族関係の用語が用いられる。

テューラニア・ガノワニア式血族組織には、自己(Ego)の性によって他の成員との親族関係が変わってくるという多様性があるが、その多様性は論理的に整備されている。
以下、セネカ−イロクォイ族を例にとってその親族関係をたどる。

▼ 第一傍系(下図を参照)
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特定の親族関係は直接表示的なもの(indicative)として区別され、その前後の親族関係を統制する。(直接表示的特徴)
直接表示的特徴1:同性のきょうだいの子どもは、自己の子どもとされる。
直接標示的特徴2:異性のきょうだいの子どもは、自己の甥・姪である。
(甥・姪の子どもは、自己の孫とされる)

▼ 第二傍系(下図を参照)
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直接表示的特徴3:父の兄弟は、自己の父とされる。
直接標示的特徴4:父の兄弟の子どもは、自己の兄弟姉妹とされる。
直接表示的特徴5:父の姉妹は、自己のおばである。
(父の姉妹の子どもは、自己のいとこである)
(同性のいとこの子どもは、自己の子どもとされる)
(異性のいとこの子どもは、自己の甥・姪とされる)
直接表示的特徴6:母の兄弟は、自己のおじである。
(母の兄弟の子どもは、自己のいとこである)
直接標示的特徴7:母の姉妹は、自己の母とされる。
直接表示的特徴8:母の姉妹の子どもは、自己の兄弟姉妹とされる。

自己の兄弟姉妹の配偶者、およびいとこの配偶者は、それぞれ自己の義理の兄弟姉妹とされる。
自己と兄弟の妻たち、あるいは自己と姉妹の夫たちとの関係に、プナルア慣習の痕跡が見られる。

▼ 第三傍系(下図に一部のみ示す)
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直接表示的特徴9:父の父の兄弟は、自己の祖父とされる。

▼ 第四傍系、第五傍系
祖父の父の兄弟は、自己の祖父である。(祖父以上の上昇系列はない)
それ以外の点に関しては、これまで見てきた法則に従う。

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▼ 結婚にもとづく親族関係(姻族関係)
義理の親子関係を表現する用語の他、一対の義理の父と一対の義理の母との親族関係を表現する用語をもつ部族もあり、テューラニア・ガノワニア式血族組織の親族名称は豊富である。
セネカ−イロクォイ族とタミール族の血族組織は同型であり、そのことは以下の2点の証拠となる。
・テューラニア・ガノワニア式血族組織が形成されたとき、セネカ−イロクォイ族とタミール族の祖先の間では、プナルア婚が普及していた。
・プナルア婚の形態は、古代社会に大きな影響を及ぼした。

(3) テューラニア・ガノワニア式血族組織の起源 (p231-p236)

・ハワイ人に見られるマレイ式血族組織は、血縁家族から作られたものである。
(例) 自己の姉妹の息子は、自己の息子。(実の兄弟姉妹の間での通婚があった)
  ↓
・セネカ族やタミール族に見られるテューラニア・ガノワニア式血族組織は、プナルア家族から作られたものである。
(例) 自己の姉妹の息子は、自己の甥。(兄弟姉妹の間での通婚がなくなった)
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テューラニア・ガノワニア式血族組織は、マレイ式血族組織を土台にしつつ、プナルア婚と氏族組織の影響によって形成された。
・「甥」や「姪」といった親族関係が生じたのは、氏族組織のもとでは兄弟姉妹が通婚することができなくなり、明らかに自分の「息子」や「娘」ではない「異性のきょうだいの子ども」を指す言葉が必要になったからである。
・「おじ」や「おば」といった親族関係が生じたのも、氏族組織のもとでは兄弟姉妹が通婚することができなくなり、明らかに自分の「父」や「母」ではない「母の兄弟」や「父の姉妹」を指す言葉が必要になったからである。
・「いとこ」という親族関係が生じたのも、氏族組織のもとでは兄弟姉妹が通婚することができなくなり、明らかに自分の兄弟姉妹ではない「おじの子」や「おばの子」を指す言葉が必要になったからである。(おじと母、おばと父は通婚できないため、「おじの子」は母の子ではなく、「おばの子」は父の子ではない)

テューラニア・ガノワニア式血族組織は、すべての兄弟を相互の妻の夫として、すべての姉妹を相互の夫の妻として、集団内で通婚したように扱っている。
プナルア慣習こそが、そのような関係である。
理論的にいうと、結婚によって結びつけられた集団がそのまま家族となるはずだが、しかしプナルア慣習下では家族の単位が大きくなりすぎて不便なので、実際には多数の小家族に細分されていたに違いない。
生活上の共産主義は、血縁家族からプナルア家族へと受け継がれ、アメリカ原住民の間では対偶婚家族にも伝えられた。

  3-6.家族形態の進歩 (p236-p237)

第二章では血縁家族、この第三章ではプナルア家族という2つの家族形態が、それぞれに対応する2つの血族組織(マレイ式とテューラニア・ガノワニア式)に起源をもつものとして説明された。
血縁家族とプナルア家族は、野蛮時代の大部分を通しての人類の進歩をあらわしている。

 ***

第一章 古代家族(概説)
第二章 血縁家族
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