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zoom RSS 岩崎允胤『ヘレニズムの思想家』要約

<<   作成日時 : 2017/06/25 16:39   >>

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岩崎允胤『ヘレニズムの思想家』(講談社学術文庫、2007)
「人類の知的遺産」第10巻(講談社、1982年)
*以下の要約では、人物の生没年などはあいまいなものもあります。

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【要約】

第一章 ヘレニズム思想とは何か(p11-)

2 ヘレニズムとその思想(p21-)

▼「ヘレニズム」という語
ドイツの歴史家ヨハン・グスタフ・ドロイゼン(1808-1884)が作った。
前323(アレクサンドロス没)〜前30(オクタヴィアヌスの地中海一帯統一)
*教科書などには、アレクサンドロスの東方遠征がはじまる前334からとするものも。
ギリシア風、ギリシア文化(西洋の優越を含意)

▼ヘレニズム期の社会
・支配階級:ギリシア・マケドニアの征服者、土着貴族、神官
・被支配階級:諸民族、原住民、都市の貧困層、奴隷

▼ヘレニズムの思想家たち
多かれ少なかれ、支配階級や体制に寄生。
・エピクロス派
・ストア派
・懐疑派
・アカデメイアとリュケイオン(ペリパトス派=逍遥学派)

3 ヘレニズム思想の特質(p30-)

▼ヘレニズム以前のギリシア哲学の歴史
○ミレトス学派(前6世紀、イオニア) 自然研究、無宗教的、運動、一元論
○ピュタゴラス派(前5世紀、マグナ・グレキア) 多(数)、宗教的、静止、二元論
○エレア派(前5世紀、マグナ・グレキア) 論理によって多と運動を否定
○多元論 エンペドクレス(前5世紀)、アナクサゴラス(前5世紀) より根源的な原因
○原子論 レウキッポス(前5世紀)、デモクリトス(前5〜4世紀) 第一原因の否定
○ソフィスト(ペリクレス時代〔前443-前429〕、アテナイ) 自然学、啓蒙
○ソクラテス(前469-前399) 魂=自己の探究
○小ソクラテス派
・キュニコス派
 アンティステネス(前444-前365)
 ディオゲネス(前412-前323)
・キュレネ派
 アリスティッポス(前435頃-前355頃)→ エピクロスの快の教え
・メガラ派
 メガラのエウクレイデス(前450頃-前380頃)→ ストア派の論理学
・エリス派(エレトリア学派)
 エリスのパイドン(前4世紀)
○プラトン(前427-前347)→ アカデメイア
○アリストテレス(前384-前322)→ リュケイオン

▼ヘレニズム以前のギリシア哲学の特徴
(1)ポリス的自由の思想(奴隷制に支えられたポリスの自由市民)
(2)真理の探究(自然としての自然や社会の真理、原因、本質)
(3)科学との連関(自然科学、社会科学)

▼ヘレニズム哲学の特徴
(1)抽象的な個人主義(ギリシア・ポリスの自由の喪失、奴隷制の拡大、運命〔遇運〕)
(2)真理の探究ではなくなる(生活法の探究)
(3)諸科学とのリアルな連関をもたなくなる(実証性を失う)

第二章 ヘレニズム思想家の群像(p76-)

1 エピクロス派(p78-)

○エピクロス(前341-前271)
○エピクロスの弟子たち
○エピクロス派を継いだ人たち
○ルクレティウス(ローマ、前99頃-前55)『物の自然について』

2 ストア派(p106-)

○キティオンのゼノン(前335-前263)
○クレアンテス(前331-前232)
○クリュシッポス(前282頃-前206頃)
○ローマ期のストア派
中期ストア派(前2世紀〜前1世紀終わり)
 ストア哲学がローマへ移入
・パナイティオス(ローマ、前185-前110)
・ポセイドニオス(ギリシア、前135頃-前51)
後期ストア派(1世紀〜2世紀)
・ルキウス・アンナエウス・セネカ(前1頃-65)
・エピクテトス(50頃-135頃)
・マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121-180)

3 懐疑派(p139-)

○ピュロン(前360頃-前270頃)
○ティモン(前320頃-前230頃)

第三章 ヘレニズム思想家の著作(151-)

1 エピクロス派(p151-)

(1)エピクロス『ヘロドトス宛の手紙』(p154-)
エピクロスの全哲学の原則論。

▼哲学研究の方法上の規則
ものごとの判断・吟味・解釈には明瞭性が必要。
・判断・吟味の基準は「先取観念」。
・「確証の期待されるもの」や「不明なものごと」の解釈の基準は感覚。
*先取観念:あらかじめもっている一般的・常識的なイメージ?

▼宇宙論
宇宙のすべては生成も消滅もせず、宇宙自体は変化しない。
全宇宙は物体と場所からできている。
・物体……要素(=原子、基体)、合成体
・場所……空虚:働きかけることも働きを受けることもできないもの(p166)
無限の宇宙の中で、無限の原子が運動し、衝突する。
原子には、それぞれ異なる形状がある。
原子の運動には始まりも終わりもない。
宇宙の中には、原子によってつくられた世界が限りなく数多くある。

▼感覚論
映像とは、個体と類似した形をもつ、最高度に微細な原子でできた流出物である。
映像は、最も速い速度(思考と同じ速さ)で物体の表面から流出する。
物体表面から流出した分は、代わりの原子によって補填される。
現実の物体と対応しない映像が、大気中に生ずることもある。

▼原子について
基体としての原子は、形状・重さ・大きさ・衝突の際の弾き飛ばす力をもつ。
合成体のもつそのほかの性質はもたない。
原子は空虚中では等速で運動する。

▼魂について
魂は原子でできた物体で、全組織体にあまねく分散し、肉体と協働する部分もある。
感覚する能力は魂にあるが、肉体が感覚の条件を提供する。

▼文明の進歩と言語の起源
言語は人間の自然的本性からバラバラに生じ、あとになって共同的に整備された。

▼天界・気象界の事象
天界・気象界の諸事象は、神が人間的感情をもって操っているのではない。
・天界・気象界の事象の窮極的な原因はただひとつ。
・天界・気象界の個別の事象には、幾通りもの原因がありうる。
これらのことを正確に知り、「心境の平静(アタラクシアー)」を得ることが、人間の至福である。

▼魂の動揺の原因とその除去
魂の動揺の原因は、矛盾した理解や、不合理な恐怖・妄想である。
それらから解放され、全般的・最重要のことを記憶していることこそ、心境の平静である。

(2)エピクロス『メノイケウス宛の手紙』(p173-)
幸福について哲学的に考える。

▼美しく生きるための基本原理
・神は不死にして至福な存在である。
・死は人間にとってなにものでもない。
これらのことを知っていれば美しく生きられる(よく生きられる=幸福)。

▼倫理説
快とは、身体の健康と心境の平静である。
快は、祝福ある人生の目的であり、すべての善の判断の基準である。
欲望についての迷いなき省察が得られれば、あらゆる選択と忌避を快のために行える。
快は「第一の生まれながらの善」(とりあえず先験的に/先取観念としてよいもの?)。
だからこそ、利益や損失を考えて選択すべき。
わずかなものに満足し快を得られるようになるという意味で、自己充足は大きな善。
真の快は、「素面の思考」から生まれる。
*素面の思考:一切の選択と忌避の原因を探り出し、魂の動揺のもととなる臆見を追い払う思考。

▼思慮:快と苦を測り比べて正しい判断をする能力
思慮こそ最大の善、すべての徳の由来、快と同等のものである。
思慮ある人間は、偶然性と必然性に振り回されず、力の及ぶ範囲のことにのみ意を注ぐ。

(3)エピクロス『主要教説』(p182-)→ 割愛

2 ストア派(p198-)

(1)ストア派の倫理学(p203-)

▼自然に従って生きること
人間を含め、動物の第一の(本源的な)衝動は、自己保持であって快ではない。
理性的動物としての人間にとって、自然に従うことは理性に従うこと。
理性に従う生とは、徳に従って一切の「カテーコン」を果たしながら生きること。

▼魂の徳=唯一の善きもの
徳とは、それ自体のゆえに選ばれるべき、自然と合致した性状である。
魂の徳は唯一の善きものである(だから善は、魂の徳によって規定される)。
幸福は、魂の徳から自然と生まれるものである。
第一義的な徳は、思慮・勇気・正義・節制である(プラトンの四元徳を継承)。

▼善いもの:何らかの利益になるもの、理性的なものの自然的な完全さ。
善いものとは徳そのものか、徳を分有するものである。
善いもの(徳)の逆が悪いもの(悪徳)である。

▼善悪無差別なもの(アディアポロン)
善悪無差別なものとは、モラルのレベルに属さないもの。
徳/悪徳と関わらず、幸福を決定せず、善用も悪用もできるもの。
・望ましいもの(価値をもつ)……よい素質、健康、富など
・どちらでもないもの……頭髪が奇数か偶数かなど
・望ましくないもの(非価値をもつ)……悪い素質、病気、貧乏など
*価値:自然に従う生活に貢献する間接的な力や用。

▼カテーコン(適合する行い、義務):
正当性をもつ行動、自然の機構に親近な活動、生における適従するもの、
理性(ロゴス)が人間になすように説得するもの。
とくに、徳に従う生活はカトルトーマ(完全なカテーコン)。
生と死は善悪ではなく中間であり、自分の命をどう扱うのがカテーコンであるかは、場合によって異なる。

▼知者(賢者)
知者は自由、無情念、友愛的、徳をもつ、正しい行為ができる、理性的生活を選ぶ。
その逆が「だめな人」である。

▼共通な法、正しい理法
正義(善悪)の起源は、共通な自然としてのゼウスである。
法の根幹は自然である。→ コスモポリテースの思想。

▼クレアンテス『ゼウス讃歌』
ゼウスは、善と悪を調和させてひとつに秩序づけ、永遠にして一なるロゴスを発生させた自然の創始者・支配者である。

(2)ストア派の自然学(p203-)

▼宇宙の原理と構成要素
○宇宙の原理
・能動的なもの(原因)=神(種子的ロゴス、ヌース、形成的な火)
・受動的なもの(原因)=第一質料(実体)
これらの非物体的な原理の結合により、世界が生成された。
神は第一質料を、いろいろなものに生成できるものにし、4つの構成要素を生んだ。
ロゴスとしての神の気息が質料を動かしている。
質料とは、そこからどんなものであれ生じてくるもの。
第一質料は実体であり、不増不減。個別の質料は増えたり減ったりする。
○宇宙の構成要素……火、空気、水、土(物体的で形態をもつ)

▼自然
自然とは、道に沿って産出に向かってゆく形成的な火(=神?)である。
やがて焔化し、また形成される。
*世界の自然と人間内部の自然がある。

▼世界(コスモス)
世界はひとつであり、有限で、球形(運動に最適だから)。
神の理性(ヌース)と摂理(神に定められた必然性)によって支配されている。
神のヌースに濃淡はある(人間の魂のように)。

▼非物体的なもの……レクトン、空虚、場所、時間
・空虚……世界の内部に空虚はなく、世界の外部に空虚が無限に広がる。
・時間……世界の運動の間隔。

(3)ストア派の論理学(p234-)

▼論理学の区分(1)
・弁論術:叙述形式の論議でよく語ることの学
・弁証論:問答形式の論で正しく対論することの学
後者は、真と偽と、どちらでもないものについての学。

▼論理学の区分(2)
・基準と標識に関する部分 → さまざまな表象(真理の標識)の相違を明らかに
・定義を扱う部分 → 概念によって事物をとらえる
どちらも真理の発見に役立つ。

▼認識における真理の標識
事物の真理を認識するための標識は、表象に含まれる。
*表象:外界にある対象を知覚することによって得る内的な対象。

▼弁証論

○弁証論が扱うもの
・現存するもの → レフェラン
  外界に実在するもの(物体的)
・指意するもの → シニフィアン
  言語の音声的形式(物体的)
・指意されるもの → シニフィエ
  音声によって示される事柄(非物体的)

○「指意されるもの」に含まれるレクトン(語られるもの)
レクトンとは、理性の表象によって存立するもの。
以下のような区分がある。
・欠陥があるレクトン(真偽がない)……主語・述語
・自己完結的なレクトン(真偽がある)……質問・命題
命題はさらに、以下のように区分される。
・単純的命題……規定的、中間的、不定的
・複合的命題……連結的(if)、連言的(and)、選言的(or)

○述語となりうるもの
述語となりうるものの最高類=「或るもの」(物体も非物体も含む)
第一類(アリストテレスの10のカテゴリーを4つにしぼる)
・基体……質料
・性質……形相=本質(ただし物体的)
・状態……当のものに直接的な付帯性
・関係……相互間での付帯性

○推論(logos)
「大前提(Aである)、小前提(しかるにBである)、結論(ゆえにCである)」の形式。
論証されえない(論証を必要としない)推論は以下の5つであり、すべての推論はこれらによって組み立てられる。
1. もしpならばqである。しかるにpである。ゆえにqである。
2. もしpならばqである。しかるにqではない。ゆえにpではない。
3. pかつqということはない。しかるにpである。ゆえにqではない。
4. pであるかqであるかどちらかである。しかるにpである。ゆえにqではない。
5.  pであるかqであるかどちらかである。しかるにqではない。ゆえにpである。

(4)ローマ期のストア派(p243-)

力の及びうる範囲内で、自然に従って生きる。
何か外的な妨げがあっても、選択意志の力(魂)によって自由でいられる。
人間に対して現れるのは、事柄そのものではなく、主観的な思いなしである。
自分の考え方次第で幸福に生きられる。

3 懐疑派(p316-)

・真理を発見したと思う定説家
・真理は発見できないと思う人たち
・探究をつづける懐疑派

懐疑派は、自分自身に現れていることに関して、判断を加えずに語る(判断保留)。
現象の背後に存するかもしれない実体などについては、確言してはいけないと考える。
現れるものについての表象を「現れるもの」と呼ぶ。
現れるものこそ、懐疑的思考法の基準である(現れるものから離れない)。

P330-
懐疑家は、表象を判定して真偽を把握し、平静な心境に達するために哲学を始めたが、
そののち、どんな論にも反対の論を立てられることを知ってしまい、
判定することができず、判断を保留した。
すると、平静な心境が得られた。
懐疑的思考の目的は、平静な心境と、節度のある感情である。

第四章 ヘレニズム思想の後世への影響(p342-)

1 エピクロス派(p343-)

ルクレティウス(前99頃-前55)
アリスティオン
ジョルダーノ・ブルーノ(1548-1600)
ピエール・ガッサンディ(1592-1655)
ドゥニ・ディドロ(1713-1784)
クロード=アドリアン・エルヴェシウス(1715-1771)
アナトール・フランス(1844-1924)
カール・マルクス(1818-1883)
原子論

2 ストア派(p372-)

ローマ法
キリスト教
ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-1592)

3 懐疑派(p386-)

アウグスティヌス(354-430)
モンテーニュ(1533-1592)
ルネ・デカルト(1596-1650)
ピエール・ベール(1647-1706)
イマヌエル・カント(1724-1804)
ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1770-1831)

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