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zoom RSS 安部公房『砂の女』あらすじの表(2)第二章前半

<<   作成日時 : 2015/02/01 12:43   >>

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安部公房『砂の女』
小説に書かれていることを、表のように整理しました。
あらすじとしてご参照ください。
(詳しい読解は「『砂の女』と小説の地平――安部公房の小説について――」へ)

  *

■■■ テキストの性格 ■■■
【【章】】
【節】
● 時間
▼ 出来事や行動。
▽ 出来事や行動以外。思考や過去の話など。
※ 備考。

  *

画像


■■■ 本編 (承前) ■■■

【【第二章】】

  【11】

● 6日目:昭和36年(1961年)8月15日(火)

▼ 女が甕を洗いながらうたい、米をとぐ。

▽ 砂にうたれて気を失った8月11日以来、寝たっきり。
8/11-12 高熱と嘔吐。
8/13 熱が引き、食欲も回復。
8/14 足腰の痛みもほとんどなくなる。
8/15 気だるさをのぞけば、自覚症状なし。(現在)
にもかかわらず重病人をよそおって床をはなれずにいる。

▼ 女に皮膚を拭いてもらう。

▽ 脱出計画@ 仮病作戦
女の働く夜は眠り、女が休まなければならない日中は睡眠の邪魔をすることで、邪魔物と思わせて解放されようという狙い。
しかし、夜は眠れず日中に寝てしまう。
▽ 捜索願への期待。
▽ 同僚の教師たちのことを思う。
教師は妬みの虫にとりつかれた存在。
・生徒=砂(流動)
・教師=石(定着)
▽ 男のプロフィール。仁木順平、31歳。

● 7日目:昭和36年(1961年)8月16日(水)

▼ 夜明け、眠くなる。新聞をねだる。
▼ 眠るまいとする。

  【12】

▼ 眠ってしまい、夢をみる。
▽ 夢――割箸にまたがって街を飛び、男女がゲームをしている部屋に入る。受取ったカードは手紙で、中から血がふきだす。
▼ 目覚めると新聞がある。新聞を読む。
▽ 夢の手紙が気にかかる。
▼ 女を起こし、新聞のことを訊く。
▼ 女と、歩く自由について話す。
▽ 「歩かないですむ自由」について。
男は女に、歩く自由を行使すればよい(砂の穴から出ればよい)と言う。
女は、歩く自由など必要ないと言う。
・歩く自由=流動。
・歩かないですむ自由=定着。
(この話をうけて、男は自分のことを再帰的に認識する)
男も、都会での生活においては、「歩かないですむ自由」(定着)にしがみついて生きてきた。
砂の「流動」は、そんな男にとって、「ネガ・フィルムの中の、裏返しになった自画像」である。
「遠足」(流動)にあこがれて砂丘の村へ来た男は、いま「迷子」になって、もとの「定着」に戻りたがっている。
▽ 女に対する欲望を感じる。
▼ 女にくすぐられる。
▽ 「食肉植物の罠」を感じる。

  【13】

▼ 眠り、夕方に目覚める。
▼ 新聞を読む。
▽ 新聞を読みつつ、これからの夜と朝のことを考える。
▼ 砂におしつぶされた男の記事を見つける。
▽ 砂と水との違いについて、新たな認識。

  【14】

▼ 作戦変更。
▽ 脱出計画A 人質作戦(短期)
▽ そもそも部屋に残してきた手紙のせいで、救援は期待できない。
「日常の灰色」の中にいる同僚らの嫉妬をあおるため、男は今回の休暇について、わざと秘密めかしていた。
秘密めかした態度は、「メビウスの輪」さえも刺激した。
ならば「あいつ」(別居している妻)をも刺激できるかと思い、思わせぶりな手紙を書いた。
その手紙は出さずに部屋に置いてあるが、それが見つかったら、自分の意志での逃亡だとみなされてしまうだろう。
※ この手紙の話が【1】に出てこないのは興味深い。

  【15】

▼ 女の不意をついてとりおさえ、しばりあげ、家の中へ追い込む。
▼ 人質に取った女の眼に動揺するが、作戦を続ける。

  【16】

▼ 部落の男たちが来る。
▼ おろされたロープにつかまり、自分を引き上げさせようとする。
▼ ロープからふるい落とされる。
▼ 男たちが去る。
▼ 家に入り、女と会話。
▽ 持久戦を覚悟。
▽ 脱出計画B 人質作戦(長期)
▽ 「観察者の気分」になりたい。無事に帰りつけたら、この体験を記録したい。
▽ 「メビウスの輪」との内的対話(シミュレーション)。
男は「責任」を厭う。
「人形使い」としての「作者」になりたい。
「作者になれないのなら、べつに書く必要なんかありゃしないんだ!」
※ 「人形使い」としての「作者」ではない「作家」になってゆく、中期の安部公房についての示唆が得られる。

  【17】

▼ タバコと焼酎の入った包みが投げ落とされる。
▽ 部落の側が折れて出たのかと思う。
▼ 女との会話。包みは週に1回(水曜日)の配給であることが分かる。
▽ 自分に対する再帰的認識――自分の考えの近視性に気づかされ、自分を虫にたとえる。
▽ 自分はもう部落の制度に登録されたのかもしれないと思う。
▼ 自分のような目にあっている者が他にもいるか訊ね、これまで逃げ出せた者はいないことが分かる。

  【18】

▼ 部落の反応を待つうちに、うたた寝をする。

● 8日目:昭和36年(1961年)8月17日(木)

▼ 起きて、水をむさぼる。
▽ 「人間に、もしか魂があるとすれば、おそらく皮膚に宿っているにちがいない。」
▼ 水甕に水がないことに気づく。部落は水を絶つつもりらしいと分かる。
▽ 自分に対する再帰的認識――自分を、罠にかかったことにはじめて気づいた獣や魚にたとえる。
▼ 女の縄を解く。
▽ 「この未知数だらけの方程式の、一体どこから手をつけはじめればいいのだろう?」
▼ 女の放尿。

  【19】

▼ 朝が来て、穴の底が暑くなる。
▼ 焼酎を飲み、苦しむ。
▽ 部落から義務を押しつけられることを厭う。
自分ひとりの文脈で完結する人生を送りたい。
※ 現代の都市生活者の個人主義(エゴイズム)が見て取れる。
▼ 砂崩れ。
▼ 外へ飛び出し、スコップをさがす。
▼ スコップで家を壊して、梯子の材料をつくろうとする。
▼ 女に止められる。
▼ 女をおさえこみ、そこから性的な雰囲気に。
▽ 「メロドラマ」を媒介にして性をとらえている女に、いったん欲望が萎える。
ほとんどの女性は、自分が主人公の「メロドラマ」として性をとらえるという「無邪気な錯覚」を持っているらしい、と男は思う。
その「メロドラマ」は、性行為に及ぶ男性と女性を、「精神的強姦」の加害者と被害者にしたててしまう。(情欲のままに女を求める男性と、男性を受け入れる女性、という「メロドラマ」)
男はそんな「精神的強姦」の責任を負うことを厭うため、「メロドラマ」をちらつかせられると欲望が萎える。
▽ 女と同様の「メロドラマ」にとらわれていた別居中の妻(「あいつ」)を想起。
男は完治しているか定かでない自分の性病を気にして、いつもゴム製品をつかっていた。
「商品見本を交換しているような」性関係に不満な妻は、男が自分の意志で責任を取る形で、直接的な性関係を求めるよう、男に促していた。
しかし男は、そのような「メロドラマ」による「精神的強姦」を避けようとする。
妻は男の「責任のがれ」をなじり、男を「精神の性病患者」と呼ぶ。
男と妻は、「鏡」に隔てられているようなものである。
・「鏡」の向う側で、妻は「無邪気」な「メロドラマ」に閉じこもる。
・性病に悩む男は、「メロドラマ」になど参加できないため、「鏡」を隔てたこちらに「不能」の状態で取り残されるしかない。
※ ここでの鏡は、性関係の間接性が形象化されたものであり、他人との「通路」をふさぐものである。

  【20】

▼ 性的な雰囲気はいったん消える。
▽ 男は、ごく短い間ではあったが自分の「不能」が克服されていたことを思う。
▽ 男は性欲について考える――「純粋な性関係」と、現代の制度化された性。
純粋な性などというものは、死との関わりの中にしかない。
現代の性は、死を遠ざけてくれる秩序と取引をするような形で、制度化を受け入れた。
しかし現実には、現代の秩序は死を遠ざけてなどいない。
制度によって保証された「精神的強姦」を楽しもうにも、制度自体を信用することができない。
したがって男は「精神的強姦」には踏み切れない。

▼ 女は「男の感情の動きを感じとった」らしく、「精神的強姦」ではない形の性交へと、男を自然に誘う。
▼ 女との性交。
▽ 「メロドラマ」に汚染されていない、ストレートな情欲を感じる。
都会での「あいつ」との性交とはまったく違う感覚。
単純な生のあり方としての「反復」を味わう。

  【21】

▼ 射精。
▽ 性交の後のむなしさ。
▼ まどろみ、夢をみる。
▽ 夢――水がほしい。
▼ 目がさめて、水を求める。
しめった砂をほおばる。
地面を掘って顔をうずめる。
▼ 女との会話。砂掻きを受け入れる。
▼ 火の見櫓から監視されていることを知り、監視者に合図を送る。
※ ベンサムのパノプティコン、およびフーコーの生権力を思わせる。
▼ 老人が水の入ったバケツを下ろしてくれる。
▼ 水をむさぼる。
▼ 老人との会話。
男が捜索されると、部落は危険ではないか。
砂掻き以外の協力の仕方があるのではないか。
砂を売りにして観光地化すればよいのではないか。
男はもっと「人間」らしい仕事がしたい。(疎外論)
▼ 老人は去る。
▼ 家に戻って水を確認。
▼ 外に出て砂掻きの仕事をはじめる。
▼ 鴉を見て、なぜか青酸カリのことを思い出す。
▼ 疲労し、寝床へ。

  【22】

▼ 夜、目覚める。
▼ 女は仕事をはじめている。
▼ 皮膚を拭く。(「人生の目的も、この瞬間でとめておくべきものなのかもしれない」)
▼ 女との会話。
▼ 外に出て、仕事をはじめる。
▽ 以前よりも仕事に対する抵抗感は小さい。
▽ 労働について考える――「メビウスの輪」とともに行った講演会を想起
「労働によって、労働をのりこえる」
「自己否定のエネルギー」
▼ 一服する。
▽ 幻の城を守る衛兵の話を想起。
※ それは女のことであると同時に、今後の自分のことでもある。(とりあえず砂の穴での生活を受け入れざるをえないと思うようになった)
※ 「ふと、自分の目玉が、鳥のように高く飛び立ち、じっと自分を見下ろしているような気がした。」

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