【読書メモ】『合理的なものの詩学』序章

加藤夢三
『合理的なものの詩学――近現代日本文学と理論物理学の邂逅』
ひつじ書房、2019年

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序章 思考の光源としての理論物理学

本書の問題意識(2ページ)

 近代日本の文化は、「科学的経験」と「文学的経験」の接触面に立ち上がってきた。
 「科学」と「文学」を二項図式的に切り離すのではなく、文化思潮を支える両翼としてとらえ直すことが必要である。

本書の問題意識(8ページ)

 明治期以降の近代日本は、西欧の理論物理学を、きわめて短い期間で受容しようとした。
 特に、昭和初期の理論物理学は、19世紀までの近代物理学と、それを内側から突き崩すような20世紀の相対性理論や量子論を、同時に受容した。
 そのため、そこには「独自の文脈」が形成された。

本書の目的(2ページ)

 近現代日本文学や言論にかかわる知識人たちが、理論物理学などの学術的知見をどのように受け止め、そこにどのような思考の可能性を見いだしていたのかを解明すること。

本書の方法(3ページ)

 主として昭和初期の文壇・論壇を研究対象とし、文学者や思想家たちが自然科学をどのように受容したかを検討する。そのことにより、ひとくくりにできないほどの多様性をもっていた近代文学の中の「科学」の諸相を問い直す。

近現代自然科学の成立と展開をめぐる思想史的な背景(3ページ)

・17世紀 「科学革命」(ニュートンによる古典物理学の確立など)
・19世紀 「第二科学革命」(科学が社会と密接に関係するようになる)
・20世紀 古典物理学から現代物理学への移行(相対性理論、量子論)

 20世紀物理学の特異性は、「理論知が実践知を超脱するかたちで発展を遂げた」ところにある(つまり、ニュートン力学などの古典物理学は、私たちの日常的経験や素朴な感覚とよく合致するが、相対性理論や量子論は、日常的経験の尺度では理解できない)。
 そのため、20世紀物理学を受容する際、「解釈」の役割が大きくなる。
 昭和初期の文学者たちは、そのような科学への「解釈」に、創造的表現の可能性を見いだした。

 以下、本書の内容が要約されるがここでは割愛。


***目次***

序章 思考の光源としての理論物理学
第一章 「科学的精神」の修辞学 ←次はこちら
第二章 「現実」までの距離
第三章 ジャンル意識の政治学
第四章 新感覚派の物理主義者たち
第五章 観測者の使命
第六章 「ある唯物論者」の世界認識
第七章 「合理」の急所
第八章 多元的なもののディスクール
第九章 「怪奇」の出現機構
終章 パラドックスを記述するための文学的想像力
補論ⅰ 「存在すること」の条件
補論ⅱ 自己言及とは別の仕方で

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