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zoom RSS モルガン『古代社会』第三篇 第二章「血縁家族」

<<   作成日時 : 2015/05/28 15:09   >>

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ルイス・ヘンリー・モルガン『古代社会』(1877年)
第三篇 家族観念の発達
(テキスト=青山道夫訳、岩波文庫、1972年)

第一章 古代家族(概説)
第二章 血縁家族
第三章 プナルア家族
第四章 対偶婚家族および家父長制家族
第五章 一夫一婦制家族
第六章 家族と関係を有する諸制度の順列

まとめ


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第二章 血縁家族

  2-1.血縁家族が存在した証拠としてのマレイ式血族組織 (p175-p176)

血縁家族とは、集団内の多数の兄弟姉妹が通婚する血族婚による家族のことである。
これは、最も進歩していない部分の人類があらわれた社会状態に属する。
血縁家族の形態自体は、モルガンが『古代社会』を執筆した時点ですでに世界に存在していなかったが、それがかつて確かに存在したということは、マレイ式血族組織の存在によって証明される。
マレイ式血族組織は、血族婚の慣習の消滅後も幾世紀にも渡って存続している血族組織であり、血縁家族の中に存在したと思われる親族関係を明確に示す。
というのも、一般に血族組織は永続性をもっており(第一章も参照)、家族形態よりも長く持続するからである。

  2-2.マレイ式血族組織の仕組み (p177-p183)

(1) 血族の5階梯 (p177-p178)

モルガンが『古代社会』を執筆した当時において、純粋のマレイ人は、実際のところはマレイ式血族組織に若干の変更をもちこんでいた。
当時マレイ式血族組織を保持していたのは、マレイ種族の中でも、ハワイ人やその他のポリネシア諸部族であった。
マレイ式血族組織の典型は、ハワイ式およびロツマ式である。

マレイ式血族組織は、人類の間に知られている最古の血族組織である。
というのもマレイ式血族組織は、何らかの概念の形成が可能である(概念的に構造化されている)組織のうちで最も基本的(単純)なものなので、この血族組織以前に他のタイプの血族組織があった(そこから発展する形でこの組織が生じた)とは考えられないのだ。

マレイ式血族組織において、すべての血族は、自己(Ego)からの親等の遠近を問わずに、最も基本的な5つの階梯に級別される。
(第一階梯) 自己、兄弟姉妹、いとこ、またいとこ、さらに遠縁の男女のいとこ
いとこという親族関係は知られておらず、この階梯のすべて(自己以外)は、自己にとって無差別に「兄弟姉妹」である。
(第二階梯) 父母、父母の兄弟姉妹、父母のいとこ、またいとこ、さらに遠縁のいとこ
この階梯のすべては、自己にとって無差別に「父母」である。
(第三階梯) 父方および母方の祖父母、祖父母の兄弟姉妹、祖父母の種々のいとこ
この階梯のすべては、自己にとって無差別に「祖父母」である。
(第四階梯) 息子や娘、その種々のいとこ
この階梯のすべては、自己にとって無差別に「子ども」である。
(第五階梯) 孫息子や孫娘、その種々のいとこ
この階梯のすべては、自己にとって無差別に「孫」である。

上記の5階梯においては、同一階梯に属する個人はすべて相互に兄弟姉妹である。
それぞれの階梯自体は性によって分割されておらず、男性も女性も同じ階梯に入れられる。

(2) ハワイ語の親族名称 (p178-p180)

マレイ式血族組織のあり方を知るための例として、ハワイ語の親族名称をとりあげる。

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別の世代の個人を呼ぶ場合、世代を示す語に性を示す語が付加される。
同世代の個人を呼ぶ場合、誕生の前後によって級別するが、異性の場合は級別しない。

(3) マレイ式血族組織の単純性 (p180-p183)

マレイ式血族組織においては、直系の兄弟姉妹(実の兄弟姉妹)および傍系の兄弟姉妹(種々のいとこ)が重複して通婚しているので、傍系が直系と区別されない。
マレイ式血族組織における血族関係は容易に理解されるものであり、この単純さのため、長く受け継がれ維持された。
マレイ式血族組織の単純な性格は、直系および傍系の兄弟姉妹が集団内で通婚する社会状態を示している。

  2-3.マレイ式血族組織の起源 (p183-p185)

マレイ式血族組織は、以下のところに見出される。
・マルケサス島人
・ニュージーランドのマオリ族
・サモア人
・クサイエ人
・ミクロネシアのキング・ミル島民
・太平洋の島々

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マレイ式血族組織のありようから、その起源が血族婚と血縁家族であったことが推定される。
(血族組織は、その起源をなす結婚の慣行が一部あるいは全部消滅した後も存続し、大きな進歩のある時期と関わらない限り変化しないのである)

血族婚は、実の兄弟姉妹の通婚から始まり、次第に結婚組織の範囲が拡大するにつれて、傍系の兄弟姉妹(種々のいとこ)を包含するに至った。
そこで形成されたのがマレイ式血族組織である。
(ちなみに、後に実の兄弟姉妹の結婚の弊害が認められるようになり、氏族組織の形成などによって、実の兄弟姉妹が結婚の対象から除外されることになる)
血族婚(直系および傍系の兄弟姉妹の通婚)を考えなければマレイ式血族組織を解釈することができない以上、マレイ式血族組織は血族婚と血縁家族から生じたと考えるほかはない。

  2-4.血縁家族の実態 (p185-p190)

一般に親族関係には、血族(血縁による親族関係)と姻族(結婚による親族関係)の2種類がある。
しかし、血縁家族においては、血族と姻族はまったく区別されなかった。
血縁家族の原則は、次のようなものである。
(父子関係) 推定上の父は実父として取り扱われる。
(母子関係) 継子(夫が他の女に生ませた子)は実子とみなされる。

血族婚における結婚の対象は、実の兄弟姉妹に限定されてはおらず、傍系の兄弟姉妹(種々のいとこ)をも同様に包含していた。
その結婚の対象となる範囲が広がれば広がるほど、近親婚の弊害は小さくなった。

  2-5.プナルア家族の先行形態としての血縁家族 (p190-p195)

家族形態は、先行する形態を自らの前提としながら、血縁家族→プナルア家族→対偶婚家族→一夫一婦制家族という順に、いわば論理的に発展した。
家族の形態と相関する血族組織は、家族の発展と並行して推移した。
これが普遍的な人類の進歩である。
プナルア家族があったところにはそれ以前には血縁家族があったはずであり、そこにはマレイ式血族組織も見出されるはずである。

(1) 1820年時点でのハワイ社会 (p190-193)

1820年、アメリカの布教団はハワイ(「サンドウィッチ諸島」とも呼ばれた)にプナルア家族を見出した。
アメリカの布教団からすればプナルア家族は不道徳なものに見えたが、人類の中に道徳が存在しなかったことはなく、ハワイ人のプナルア婚も道徳の欠如ではない。
ハワイ人はプナルア家族の段階に入っていたが、それは血縁家族から発達してできたものであり、血族組織の面ではほぼマレイ式のままであった。
ハワイ人の親族はいくつかの小集団(小家族)に分割されており、個人はその間を自由に行き来した。
彼らは生活上は共産主義であった。

(2) 中国人の九族関係 (p193-p194)

モルガンが『古代社会』を執筆した当時に知られていた中国の九族関係は、テューラニア式血族組織の要素の導入によって多少複雑化してはいるものの、9つの階梯の級別であり、ハワイ人の血族組織(マレイ式血族組織)と同質である。
このことから、中国には昔プナルア家族があったことが分かり、必然的にその前には血縁家族があったということになる。

(3) プラトンの『ティマイオス』 (p194-p195)

プラトンの『ティマイオス』の中にも、マレイ式血族組織と同じような親族の5階梯を暗示する記述がある。
プラトンは、ギリシアおよびペラスギ族(ペラスゴイ人:ギリシアの先住民族)の伝説に精通していた。
プラトンの『ティマイオス』の中で語られる理想的共和国は、それらの伝説によって明かされた、未開時代よりもさらに早期のギリシア諸部族の状態を模したものだといえよう。
『ティマイオス』の理想的共和国においては、夫と妻は集団において共有され、さらに子どもたちは親に共有される。

  2-6.血縁家族の先行形態としての乱婚 (p195-p196)

野蛮時代前期の血縁家族のさらに前には、原始時代の乱婚があったと考えられる。
乱婚を行っていた人類は未組織のものであり、それが改善されて、最初の社会的な組織形態としての血縁家族が生まれた。
この血縁家族が、人類の進歩の歴史の出発点である。

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